ギルウェル山の会

ボーイスカウト関係者による登山の同好グループの山行記録。

vol.4 「いのちの代償」

山岳遭難 ( ノンフィクション・ルポルタージュ ) から学ぶ

 

「いのちの代償」  

 

  ― 山岳史上最大級の遭難事故の全貌! ―

 

 川嶋 康男著   ポプラ文庫  ¥571

 1962(昭和37)年12月、北海道学芸大学函館分校山岳部のパーティー11名は、冬山合宿に入った大雪山で遭難した。部員10名、全員死亡。生還したのはリーダーの野呂幸司だけだった。かたくなに沈黙を通す野呂に非難が浴びせられた。46年の沈黙を破り、遭難事故の全貌がいま明らかにされる。

 「昭和37年暮れからの表大雪山合宿、11人が2班に分かれて表大雪を縦走。合流後、旭岳からの下山を予定していた年末、天候の急変に見舞われた。強風下、雪洞が壊され、外気に晒されながら一夜を過ごす。だが、下山途中で滑落する者、彷徨する者、崩れるように意識を失くしていく仲間を救うため、救助を求めての下山を決意。奇跡的に生還したのは、パーティーリーダーの野呂幸司ただ一人。それは、栄光なき生還であった。その後の野呂幸司を待ち受けていたのは悔恨と苦渋の連鎖である。ブラックホールに引き込まれるような緊張を強いられ、執拗な問いや周囲の目に追い回される。24歳の学生の心はすでに臨界点を越え、ピアノ線のように異常に張りつめていた。吹雪の大雪からリーダーだけが生還した。パーティーの責任者たるリーダーが生き残った。大方の遺族は、リーダー野呂幸司の生還に割り切れぬ思いを引きずることになる。わだかまりは増幅し、波紋がやがて残響として共鳴し合う」……本文より。

 (H林)

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